少し前に千葉県の三里塚(さんりづか)教会で行われた、見学会とトークイベントに参加してきました。
三里塚教会は、彫刻家の戸村一作が施主となり、吉村順三が設計を手掛けた唯一の教会建築です。
吉村順三は日本近代建築の巨匠ですが、ローコストや小さな建築も手掛けていたりします。この教会も戦後の資材難に建てられたこともあり、小さくて素朴で、私好みの建築でした。

この教会、千葉大学の頴原研究室が保存活動を行っているそうで、今回のイベントも学生たちが中心になって開催されました。
これまで、実測調査や見学会のほかに、キャンドルナイトや講演会などのイベントをされてきたそうです。素晴らしい試みだと思います。
一見すると何でもない建築に見えますが、要素の乏しい「貧」のなかにも、凛とした佇まいからは「品」を感じます。

聖堂内でトークイベントが行われました。トークのなかで、「和」を感じるという意見もありました。真壁であること、杉板や漆喰という伝統素材であることが懐かしさを生むのかもしれませんね。
半割の丸太で挟んだ梁は、吉村の師匠であるレーモンドに学んだところでしょうか。

祭壇後ろの正面の壁は、横から間接光を入れて白い壁を照らし、梁と付け柱による十字架を静かに浮かび上がらせています。
天からの光でないところが、水平からの光を基本とした日本建築に通ずるところかと思います。
丹下健三の「聖マリア大聖堂」や、安藤忠雄の「光の教会」に見られるような西洋的な直接的な光の表現ではないところが、謙虚で実に吉村らしいですね。
この教会は紆余曲折があり、一度取り壊しの危機に瀕したのですが(実際に重機による傷がある)、寸でのところで阻止され現存しています。
今は築70年を越え、所有者らの自己資金によって何とか存続している状況です。
建築は、完成した瞬間だけではなく、残され、使い続けられることで初めて文化になります。こうした活動が少しずつ広がり、大切な建築が次の世代へ受け継がれていくことを願うばかりです。
次回のイベントでは、外壁の塗装ワークショップを企画しているそうですので、気になった方は、頴原研究室のインスタグラムを覗いてみてください。
“風景の一部となっている建築はある日失われて初めてその価値に気づく。だがそれでは遅いのだ。
私たちは、もっと、「自分にとって」大切な建築を日々の暮らしの中で自覚しても良いのではないだろうか。”
『身近なところからはじめる建築保存』潁原澄子
書いたひと
宇賀神 亮