
写真家ハービー山口さんの写真集『代官山17番地』。
古本屋で手に入れてから20年以上経つが、今でも自室の本棚に並ぶ大切な一冊だ。
そこに写っているのは、同潤会代官山アパートの最期のすがた。
表参道ヒルズができた際に話題になった、あの同潤会アパートが代官山にもあったのだ。
そこには長い時間をかけて育まれてきた、建築と自然、そして人との関係が写し出されている。
建築と自然と人は、こんなにも近かったのだとあらためて気づかされる。
今の建築はどうだろう?
いい建築は増えたと思うが、建築は洗練されるほど、人や自然から孤立していくように思う。
代官山アパートは1996年に解体され、今は代官山アドレスという商業施設や集合住宅になっている。
モノクロームの写真に収められているのは、解体が決まったアパートが自然に還る寸前の姿でもある。
最近、『人間がいなくなった後の自然』(カル・フリン著)という本を読んだ。
人間が放棄した土地や建物のその後を追ったドキュメンタリーのような作品だ。
どうしようもない程に破壊されたその場所で、新たな生態系が育まれ、自然は回復していく。
人間が余計なお世話をせずに、自然に任せた方がいいこともある。
建築と自然と人と。
今は少しぎくしゃくしているように感じる。
三者がともに幸せになれる、あらたな関係を創造していくことが必要ではないだろうか。



“ここが再開発の為、取り壊されると知らされたのは工事が始まる一年程前のことだった。(中略)そんな彼等の一人が僕に言い残した。
「これを終わりと思うんじゃなくて、人々が優しくなれる街を作る、新たなスタートにしなくては…。」その力強い言葉に、寂しさに揺らぐ僕の心はどれだけ勇気づけられたことだろうか。”
『代官山17番地』本文より
書いたひと
宇賀神 亮