写真家/和嶋亜有六さんの「光る和紙写真展」の空間構成を手掛けました。
奈良時代より伝わる烏山和紙に印刷した写真を、光に透かして展示するという新しい試みです。
会場は倉庫を改修した建物で、土間床に鉄骨剥き出しのラフな仕上でした。
柔らかい質感の和紙とラフな会場の雰囲気をつなぐようなものを考え、木目の強すぎないラワン合板のみで展示の壁をつくりました。
壁の中に調光調色機能のあるLED照明を仕込み後ろから和紙を照らす仕組みです。時間帯や作品によって光の強さ、色味を調整しています。
会場は窓からの自然光の明かりを頼りに、奥に進むほど暗さが増して写真が浮かび上がるように計画しました。そして一番奥の溜まりの空間には背面から自然光で透かした大判作品を展示し、ゆっくりと鑑賞できるようベンチを設えました。
この自然光の作品は天候や時間によって光が移ろうことで、写真のなかの世界も刻々と変化していきます。
元来写真は一瞬を切り取るものですが、光を与える事で切り取られた後の景色まで浮かんでくるようでした。
和紙と光によって写真表現の幅が拡がり、今後の可能性を感じられる展示となりました。
作り手が僅か一社になってしまった烏山和紙の良さを伝えたいという和嶋さんの想いに共感した地元大工さんや仲間とともに協同して作り上げました。