暑い日が続きますね。
避暑も兼ねて、長野県にある八ヶ岳高原音楽堂に行ってきました。
標高1,500mの山の上にある小さな音楽ホール。吉村順三が設計した名建築です。
この日はチェンバロのミニコンサートが開催されていたので、小一時間ほど音楽を鑑賞してきました。
↑駐車場から音楽堂までは森の中を歩いていきます。気分もリフレッシュできますね。
↑森を抜けると音楽堂が見えてきます。大きな勾配屋根が迎え入れてくれます。
吉村順三ファンとしてはこの時点で感動ものなのですが、しかし吉村建築らしくないと言えばらしくない。
シャープさや軽やかさというよりも、形式が強く、重く、地に根付くような建築。
森の中に浮かぶピロティ形式の別荘とは真逆の、地面に覆いかぶさるようなしっかりとした存在感。
吉村事務所出身の藤井章さんの著書『建築家・吉村順三の鞄持ち』のなかで、吉村先生が晩年に「僕はこれから、設計を楽しんで遊ぶんだよ。」と話されていたそうで、最晩年のこの頃にはそういった周囲の「吉村建築」のイメージに捉われることなく設計されたのだと思います。
↑六角形の小さなホール。トップライトからのやわらかい光と、森の緑が眩しい。内装には地場産のカラマツなどが使われています。
内部に入ると、外観から想像するよりもずっと小さく、こじんまりとして、木に囲われたあたたかな空間。
ホールに入り、ずらりと並ぶ「折りたためる椅子」に腰掛けると、やさしい光と森の緑に包まれて、静かで落ち着いた気持ちになります。
さて、そろそろ開演と思ったら、ざぁーっと雨が降ってきました。
「雨音と共にお楽しみください」とのアナウンスがあり、それも素敵だなと思っていたら、すぐに雨があがり、光が射し込み、靄がかかって、幻想的な雰囲気のなか演奏が始まりました。
森のなかで、雨が降ったり、蝶が舞ったり、小鳥の囀りが聴こえてきたり、自然の音とチェンバロの音が重なって、この場所ならではの素敵な音楽となりました。
建築に自然が溶け込むことで、音を楽しむことがこんなにも豊かになるのかと、とても幸せなひと時でした。
↑地場産のカラマツでつくられたチェンバロ。形はピアノみたいですが、弦を弾いて音を出しているのでハープのような音色がします。
演奏の方はというと、奏者の山下実季奈さんが曲の説明も丁寧にして下さり、優しい音色に癒されました。
私は音楽に疎いのですが、民謡やジブリの曲なども交えながら素人でも楽しめるプログラムになっていました。
「いい建築」は体感しないとわからないもの。
五感を開いて、感覚を養う。
この感覚を忘れないように、旅に出て、建築巡りを続けているのだと思います。
今回は日帰りで行ったのですが、隣接するロッジに宿泊することもできるようです。
またいつか、ゆっくりと訪ねてみよう。
書いたひと

宇賀神 亮