
代官山の「galley ON THE HILL」で開催された、「木工家 三谷龍二展「岸辺を離れて」に行ってきました。
三谷龍二さんはご存知の方も多いと思いますが、「生活工芸」の旗手として長年に渡り生活に根差した木の器などをつくられている木工家さんです。
建築界隈だと中村好文さんと仲が良く、中村さんのデビュー作「MITANI HUT」は、こちらの三谷さんの家のことです。
今回はそんな三谷さんの絵や立体作品の展示と、飛騨産業で製作された三谷さん初の椅子の展示がありました。

絵や立体作品は思ってたよりずっと小さくて可愛らしい。三谷さんらしい素朴で味わいのある表情をしています。部屋の片隅にさりげなく置かれるくらいがちょうどいい。まさに生活の内にある工芸品といった様相です。
もともとは『住む。』という雑誌で連載をされていた際に、これらの作品を一緒に掲載していたようです。今では、『僕の生活散歩』という本にまとめられていますので、気になった方はぜひ拝読してみてください。とてもいい本です。

飛騨産業とのコラボ「3r-h armchair」シリーズのラウンドテーブルとアームチェア。
シェーカー家具のローバックチェアを参考にされていて、背もたれが低くテーブルトップと同じ70㎝の高さに抑えられています。
部材が太すぎず、細すぎず、絶妙なバランス感覚です。背もたれを支える部分がくいっと傾いているところが可愛らしいですね。
クッションはやや硬めでしたが、座面が横に広く、ゆったりとした座り心地でした。

子ども用の家具もありました。ちょこんとしたフォルムが何とも可愛らしい。
最近はプラスチックや合板の家具が多いですが、やはり子どもには木の家具で身体感覚を養ってもらいたいものですね。
三谷さんは長野の松本市にお住まいで、生活と仕事と創作と、とてもいいバランスで過ごされているように思います。きっとロールモデルにされている方も多いのではないのでしょうか。
私も三谷さんのような生活に憧れるうちの一人です。なかなかお店に行くことも難しいので、こういった機会に三谷作品に触れられて嬉しく思います。
工芸青花でもたびたび展覧会をやっているのでそちらもおすすめです。
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帰り際に、新刊『うつわのそれから』を購入。おそらく自費出版のZINEだと思います。
三谷さんは時代を読む力が高く、それを伝える文章もまた人を惹き付けるものがあります。生活工芸の作家たちが注目されるようになったのも、みんな文章が書けたからだと何かに書かれていました。
“手でものを作る。それが当たり前だった時代があった。
自分たちの暮らしで必要なものは、自分たちの手で作った。
もちろん労働はきついけれど、そこには喜びもあった。
でもいまは、人が作ったものを、お金で買うようになった。
楽にはなったけれど、働くことの喜びは薄まった。
手間暇かけてものを作ることは
生きることの手応えを、身近に引き寄せることではないだろうか。
どこかで失ってしまった、具体的なものとの関わりを、
ふたたび取り戻すことなのだ。”
(本文より抜粋)
書いたひと
宇賀神 亮