「M/E」という本がある。
写真家、川内倫子がアイスランドを訪れたことをきっかけに、自然や身の回りのものを捉えた写真集だ。
MはMother、EはEarth。
Mother Earth(母なる大地)の頭文字とのこと。
そして、Me(私)の意味も含まれる。
果てのない大地の写真と、私的なものが同列に並べられ、一つの世界がつくられている。
川内さんの写真は冷たくてやわらかい。
ひんやりした肌に触れ、やがて温もりが伝わるように、ゆっくりとあたたまる。
そんな写真に惹かれている。
本としての構成も面白い。
写真の後に必ず見開きの空白ページが入っている。
一枚捲っては、余白が生まれ、また一枚めくる。
フィルム映画を観ているようなゆとりがある。
高校生の頃だっただろうか。
深夜ラジオで(たぶん)大林宣彦監督が話されていた。
「フィルム映画は、コマが切り替わる0.何秒の間に空白の時間がある。それは、考えるための時間だった。デジタルになり、シームレスに映像が流れることでこの空白がなくなり、ただ受け入れるだけになってしまった。」
遠い昔のことなので正確ではないが、ずっと心に残っていた。
スマホから情報が流れ続け、配信動画を見続ける、考える時間を奪われた人たち。
経済的でも合理的でもない、この空白が必要なのではないだろうか。
僕は考えるのが遅い。
だから動画より写真のほうが好きだ。
一枚一枚ゆっくりと紙をめくる時間もまた愉しい。
最近の川内さんはコラボ作品も多い。
谷川俊太郎の詩に写真を合わせた、「いまここ」もよかった。
この本のきっかけとなったクラムボンの原田郁子との演奏会が先月、益子のstarnetで開かれたそう。(行きたかったのだが予定が合わず、、、)
音楽家、haruka nakamuraとのコラボでは「カナタ」という曲のMVを手掛けている。曲もすごくいいのでYoutubuを覗いてみてほしい。
今後もずっと楽しみな人だ。
書いたひと

宇賀神 亮