11月の中ごろ、ASUのメンバー3人で東北へ1泊2日の小旅行に行ってきました。
3人の行きたいところを織り交ぜた結果、弘前、八戸、石巻の3都市を巡ることになりました。
1日目は早朝に宇都宮を出て、弘前と八戸に向かいました。
お昼ごろ弘前駅につくと、もう真冬。冷たい空気に小雨が降ってどんよりとした空模様。昼食に弘前のソウルフード「中みそ」の味噌ラーメンを食べてから、最初の目的地へ。

まずは私が行きたかった、「弘前れんが倉庫美術館」を見学。
1907年に日本初のシードル(りんご酒)を製造する酒造倉庫を改修した美術館です。設計はパリ在住の建築家、田根剛さん。
「記憶の継承」をコンセプトに、PFI方式により実現した建築です。
耐震を確保するために鉄骨で補強せず、PC鋼材を煉瓦壁に打ち込むことで佇まいをそのままに保存しているのが特徴です。
煉瓦の古い部分と新しい部分を対比させるでも馴染ませるでもなく、別の時代の同じ素材として未来へ継承していくというスタンスは素直でいいなと思いました。
期待も高まり、いざ入館。
と思いきや、まさかの火曜日休館で中に入れず、、、

泣く泣く、窓から覗いたら、奈良美智さんの犬が見えました。
思えば、奈良さんの「AtoZ」の展覧会は改修前のこの場所から始まったのでした。
今回は外観だけになってしまいましたが、また次回来る理由ができたと前向きに捉えて次の目的地へ。
と、その途中で五重の塔が見えたので寄ってみることに。

そこには、見惚れてしまうほど美しく色づいた木々に囲まれた立派なお寺がありました。「最勝院」というお寺さんで、空海が約一千年前に開創した真言宗智山派の仏教寺院とのこと。
美術館が休館していなければお寺に寄る時間もなく、この紅葉を見ることもなかったことでしょう。
トラブルや偶然の出会いこそ旅の醍醐味。そんな出来事でした。

その後は弘前市内をぶらぶら歩きながら、日本の近代建築の巨匠「前川國男」が設計した建築をいくつか巡りました。
弘前には前川建築が数多く残されていて、建築好きにはちょっと知られた場所なのです。

モダニズムのシンプルで合理的ななかにも、スケールの操作や素材の繊細な扱い方が、人のための落ち着く居場所をつくっています。特に高さ関係は勉強になりました。低く抑えている分、全体のプロポーションも水平に伸びて美しい。
弘前は何度か訪れたことがありますが、弘前城を始めとして古い建物や文化財も多く、伝統的建築群保存地区もあり魅力的な都市だと思います。また今後も訪れることでしょう。
さて、弘前から宿泊地の八戸に移動です。

八戸では、2021年に開館した「八戸市美術館」へ。
設計は、西澤徹夫+浅子佳英+森純平の三者に、構造はオーノJAPAN。
ジャイアントルームと呼ばれる共用部(中心の凸の部分)を中心に、ラボやワークショップルームなどを有する「ラーニングプログラム」の拠点としての美術館です。
その特異なプログラムがそのまま形態に現れているところが面白いですね。内観、外観といった区別すら意識させない説得力があります。
そしてこちらも当然のように、火曜休館。
「美術館=月曜休館」という常識も軽々と飛び越えていきます。※単に我々の調査不足

つづいて、「八戸まちなか広場 マチニワ」へ。
その名のとおり、街の中心部にある広場のような建物です。面白いのは、ガラスで囲われているだけで空調はなく、床もアスファルトのまま道路につながっていて、外のような内部になっているところ。イベント時にはガラスの扉も開放して外と一体利用もできるようです。
学生やバスを待つ人、我々のような旅行者まで、多様な人が自由に過ごしていながら、空間を共有することによる安心感もあります。
弘前、八戸に限らず、青森市や十和田市のアートプログラムなど、青森には文化拠点をつくる先進事例が多く見られます。
政治家の差なのか、市民の差なのか、へき地であるがゆえなのか。
栃木はその辺が本当に下手なので、見習いたいところです。
夕食は飲み屋街で海鮮と日本酒を堪能し、ホテルへ。波乱の1日目を終えました。
2日目につづきます。
参考文献:「新建築2020年5月号」「新建築2022年1月号」
書いたひと
宇賀神 亮