二つの建築展

ギャラリー・間で開催中の「篠原一男 空間に永遠を刻む――生誕百年 100の問い」と、国立新美術館の「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」に行ってきました。

 

 

まずは篠原一男展、こちらは篠原一男の生誕100年を記念した展覧会。

代表作の図面、スケッチ、模型で構成されたオーソドックスな展示形式でした。

 

私は篠原一男についてあまり馴染みがなく、作品集をぱらぱらと見た記憶はあるものの、じっくり見る機会は初めてでした。

そんなことでしたので、篠原一男という建築家を誤解していたのかもしれません。

力のあるスケッチと鋭い言説、幾何学の造形からイメージしていた篠原像とは全く違っていました。

 

私の知っている篠原一男の作品は主に後期のものだったようで、初期の「から傘の家」、「白の家」、「地の家」は素晴らしく見惚れてしまいました。

モダニズムの取り込み方が実に日本的で、漢字をひらがなに当てがったように、抽象を和の家に取り込んだ、今で言う「和モダン」に近い、染まり切らない良さがありました。

 

↑「白の家」の展示。原図も並べてありました。

 

1階の展示は初期の作品をメインに、中庭を挟んで2階は後期の作品でしたが、どんどん抽象度が高まり、あの濃いスケッチが出てきて、最後は未完の自邸の図面に至るといった流れで作風の変容がわかるのですが、革新的な人ほど晩年は理解し難い方向に進んでいくものだなぁとぼんやり考えたりしたのでした。

 

 

↑「リビング・モダニティ展」の会場風景。

 

つづいて、国立新美術館へ。ギャラリー・間から徒歩5分くらいで着きます。

こちらは1920-1970年のモダニズム全盛期の国内外の名住宅を集めた展示でした。

 

およそ写真、図面、1/10の大きな模型で構成されていて、ワンルームの会場に作品毎のブースを置く形で展示されていました。

昨今の展覧会の混み具合を考えると、こういった自由レイアウトの展示は好きに分散して見れるのでいいかもしれませんね。

 

↑菊竹清訓のスカイハウス、1/10だと迫力があります。

 

なかでも広瀬鎌二のSH-1の原寸の構造フレームは衝撃的でした。「百聞は一見に如かず」ならぬ、「百図は原寸に如かず」。

40角の柱に75x40の梁、こんなに華奢で大丈夫なのか?今の感覚だと不安になるほどでした。

この華奢で繊細でミニマルなプロポーションは、工業化していくなかで唯一といっていいほど美しさを保てた住宅ではないでしょうか。

 

↑広瀬鎌二のSH-1原寸フレーム

 

そのほか、藤井厚二の聴竹居や、アアルト、カーンなど好きな建築家の作品が点在していて見応えのある展覧会でした。

 

最後に2階にはミース・ファン・デル・ローエの未完の住宅、「ロー・ハウス」の原寸展示がありました。こちらは無料で入れます。

クラウドファンディングで資金調達して実現に至ったとのことです。

 

↑ミースの「ロー・ハウス」原寸展示。抽象の先には何があるのか、考えさせられます。

 

以上、建築展の梯子旅でした。

六本木界隈は、「ギャラリー・間」を始め、「21_21 DESIGN SIGHT」、「森美術館」など、建築やデザイン関係の展覧会が多く馴染み深い場所なので度々訪れます。

 

 

また面白い企画展があったらご紹介したいと思います。

 

書いたひと

宇賀神 亮