毎年、楽しみにしている本がある。
作家、小川糸さんのエッセイだ。
エッセイといっても、彼女の一年分の日記(ブログ)をまとめたもので、三年遅れくらいで文庫本にまとまり出版されている。
数えてみたら今年で15冊目になる。
小川さんは「食堂かたつむり」でデビューして以来、身近なテーマを扱ったあたたかな作品を書かれている。
「ツバキ文具店」や「ライオンのおやつ」などはドラマ化もされて有名かと思う。
小説のなかからも暮らしを大切にされていることがわかる。
そんな彼女は今、長野の森のなかで暮らしているそう。
その前はドイツのベルリンに住み、鎌倉に住み、軽やかに住処を変えながら暮らしている。
エッセイでは、そんな森暮らしの話から、旅の話、料理の話、見た聞いた体験した、素敵な話がたくさん詰まっている。
「丁寧な暮らし」というよりは「暮らしを楽しんでいる」ことが伝わってくる。
もちろん、作家という職業であることも彼女の行動を軽やかにしている要因ではあると思う。
しかし自分の好きなように生きるのは、なかなか大変なことだ。
住みたい場所に住んで、食べたいものを食べて、会いたい人に会う。
こんなシンプルなことがどうして難しいのか。
ついそんなことを考えてしまう。
だから小川さんのやさしい言葉で、絡んだ心の糸をほぐしてもらう。
一気に読まないで、仕事が早く終わった日の夕暮れ時、少しずつ読んでいる。
昔、村上春樹さんが気軽に読める本のことを「スパゲッティを茹でながら読む本」と表現していたけれど、
僕にとっては「ビールを飲みながら読む本」である。
さぁ今日もビール片手に読めるよう、せっせと仕事しよう。
―おまけ―
↑山小屋での暮らしは最近出版された「いとしきもの」に詳しく紹介されています。設計は丸山弾さんだそう。
書いたひと

宇賀神 亮